青ひげは本当に殺人鬼だったのかどーか…?

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こんにちは、栁澤蘭丸です。

「青ひげ」とは、シャルル・ペロー作の童話のひとつです。童話にありがちな「やっちゃいけないよ」と言われていたことを、ついやってしまった者(大体主人公)が窮地に陥る話のひとつなのですが…そういう話を見ると「やっちゃいけないのは分かったけど、どういう理由でやっちゃいけないのか言えよ!」と思ってしまうことが多いですよねぇ。浦島太郎の「玉手箱開けるなよ、絶対開けるなよ」事件とか。「絶対開けるなよ!」と言われると、ほぼ反射的に「これは開けろって意味だな」と思うほどです。
これはフランスの話ですが、「好奇心が猫を殺す」という諺がイギリスにあるとおり、禁止されると好奇心が刺激されてしまって、逆にやっちまうよね…というのをなるべく防ごうという教訓話なのでしょうか。

青ひげの物語はこう!

昔々あるところに、青ひげと呼ばれる王様がいました。もしここが中国ならば「美髭公」と言われていてもおかしくないであろうほど、おひげの立派な人物でした。
この青ひげ王がある日馬車でお出かけ中、ある貧しい家を通りかかると、そこの娘さんを一目で気に入り、「嫁に欲しい」と言いだします。娘は「こんな髭モジャ、生理的に無理」と思いました。が、相手は王様。完全に玉の輿であるため、親はノリノリです。娘さんは仕方なく結婚を承諾。
しかし、何か嫌な予感がしたので、3人の兄に「お兄さんたち、私が助けを呼んだら絶対に助けに来てください」と頼んで嫁に行きました。
青ひげの嫁になってから、娘は贅沢三昧をさせてもらい、何不自由なく暮らしていました。青ひげがヒドイことをしてくるわけでもありません。しかしどうしても「髭モジャは無理」という気持ちが抜けることなく、なるべく青ひげに接しなくて済むように暮らしていました。(妻なのにw)
ある日青ひげ王は、従者数人と、しばらく出かけることになり、娘に城の留守を預けることにしました。城の全てのとびらを開けられる鍵束を渡して、「どの部屋でどう過ごしてもいいけど…でもこの金色の鍵は使ってはいけないよ。使ったらお前は死ぬ」と、カードゲームの注意書きみたいな唐突な言葉だけを残して青ひげは出発していきました。
娘は金の鍵なんてどうでもよく、「やった!あの髭野郎しばらく帰ってこない!」と喜び、とりあえず色々な部屋を見て回り楽しんでいましたが、とうとう残すはその「金の鍵」で開く扉だけになってしまいました。

ここで我慢できるのが普通の人間。我慢できないのが物語の中の人間です!
娘は、好奇心に負けて「どうせばれないって」という精神の元、金の鍵で扉を開けると、それは地下へ向かう階段を隠すための扉だったようで。
娘が地下に降りてみると、そこには惨殺死体が山盛りになっていました。恐怖のあまり、つい鍵を手からぽろっと落としてしまった娘…鍵は、部屋に出来ていた血だまりにぼちょんっと落ちました。
うわ…!と思いながらも何とか金の鍵を拾うと、金の鍵は血を吸って赤く染まっています。急いで地上に戻り、手と鍵を洗うものの、金の鍵ついた血が取れません。
次の日には青ひげが帰ってきてしまい、「鍵返して」と言われてしまったので、しぶしぶ返すとやっぱりバレてしまいました。「お前あの部屋を見たんだろう。次はお前が死ぬ番だ」と言われてしまいます。そこで娘は、「死ぬ前にお祈りがしたいです!」と時間を稼ぎ、その隙に3人の兄を呼び寄せます。そして、「もうそろそろお祈りいいだろ」ってやってきた青ひげ王を兄3人と惨殺。青ひげの死体をあの金の鍵の部屋に放り込み、娘は妻として青ひげの財産を全て相続。兄たちと楽しく暮らしましたとさ、めでたしめでたし。

ってな感じです。
この話には泣き寝入り感がありません。娘は最初っから青ひげが嫌いで、言う事なんて当然聞かないし、最後には兄を使って殺してしまいます。
その理由はというと、「青ひげは殺人鬼で、自分も殺されそうになったから」なのですが…娘とその兄3人以外に、そのことを知るものはいません。この話は、青ひげを殺した側の供述だけで成り立っています。他の殺人鬼話(血の伯爵夫人とか)みたいに、従者も第三者も誰も介入してこず、介入してきたのは結果的に青ひげの遺産で贅沢している人だけ…。

これは…本当に「好奇心を出し過ぎると死ぬぞ」という話だったのだろうか…!?
コナンか金田一か、科捜研が出張ってきたら逮捕されるのは青ひげの嫁たちの方かもしれない案件です。だって青ひげは、娘に何も酷いことをしていないし、嫌っていたのは娘の方だったわけですし。贅沢三昧していたくせに。
大体「しちゃいけない」系の話で持たされるアイテムは、玉手箱のように、主人公が持ってこそ意味があるもの。一方、ただ単なる青ひげが見られたくない部屋の鍵を嫁に渡すという行為は、嫁にとっては特に意味はありません。警察に言ったとしても「何故そんなものをあなたに渡したんですか」と言われてしまいそうだし、それに対して嫁は「頭のおかしい人のことなんてわかりっこありません!」とか言うしかありません。いつも感じる「しちゃいけない理由を言えよ!」って部分も、浦島太郎なら「歳食ってじじいになるから」と説明してくれれば開けなかったのに…と思えるけど「殺人現場だから開けないで」なんて、殺人鬼が説明できるわけがないので、鍵を渡したという部分が他と違っておかしいんですよねえ。「開けたお前が悪いのだ」と、青ひげが自分を正当化したくて渡したのだとしたらリスクがデカすぎ。自分が帰ってくる前にその鍵を持ってどっかもっと偉い人のところに駆け込まれたらアウトですし、連続殺人犯は、これからも殺人をしていくために、綿密な計画を立てなければならないはずなのにこの杜撰さ…おかしい!これは事件の匂いがするぞ…クンクン…。(個人の感想です)

ちなみに青ひげのモデルは、少年をたくさん殺したジルドレ伯爵、嫁を冤罪で処刑したイングランド王のヘンリー8世、アラビアンナイトに出てくる王様で、シェラザードを脅してたシャフリヤール王(架空の王様)、色々いるそうです。

死人に口なし…でございますね。
栁澤蘭丸でした!ではではでは!ではでは!!

青ひげは本当に殺人鬼だったのかどーか…?_挿絵1
勇者伊達には何を言っても必ず開けるであろう。さらにシステム的に開けられないようにしておくと、怒涛の文句を言うであろう。

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