ダークスターを観た感想と評価:映画考察

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皆さんこんにちは!
★5の探索者伊達あずさです。
何時迄も★5評価の作品が出ないことに焦りを感じ始めた私は遂にTSUTAYAさんの発掘良品のコーナーという他人のお勧めに頼り始めるほど追い込まれてしまいました。
この発掘良品というコーナーは「面白い」ことのみを基準とし、旧作だろうが未公開作だろうが関係なく、埋もれた名作を発掘し、紹介してくれるというコーナーなのです!
パッケージ選定眼に関してすっかり自信を失っている私は他人の力に頼ることにしました。

そんなわけで今回紹介する映画は・・・
ダークスター(Dark Star)」です。

いつもの様に作品情報から。

ダークスター
原題:Dark Star
ジャンル:SF
製作国:アメリカ
公開年:1974年
監督:ジョン・カーペンター
概要:人類による植民地化が可能な新たな惑星の捜索と、それを妨げる周囲の不安定性惑星の破壊というミッションを与えられた探査船ダーク・スターは地球から59光年も離れた銀河の彼方で今も単独で任務を遂行していた。しかし、長い間地球からの支援もなく単独で任務を続けるダーク・スターの船内設備には劣化が激しく、電気系トラブルによる放射能洩れが原因で船長のパウエルが既に命を落としていた。しかし、地球側はダーク・スターまでの距離とプロジェクトの予算削減を言い訳に支援を拒否。ダーク・スターの船員達は絶望的な状況の中、任務を続けるしか無かった。そんな中、ダーク・スターは航行中に遭遇した宇宙嵐によって爆弾倉システムに指示を出すための通信レーザーを破損してしまう。これが原因となり誤動作を始める爆弾20号。船員達は自我を有する爆弾20号を説得し、爆発を防ごうと説得を試みる・・・

何というか、自我を持った爆弾を説得するっていう点が凄まじいまでに斬新ですね・・・
しかも、この監督の作品はカルト的人気を誇っているらしく、伝説の爆笑SFとかカルトSFとかおおよそ聞いたこともない評価が成されていました。
まあ・・・自滅を生業とする爆弾に自我を持たせている時点でシリアスな雰囲気は確かにしませんけど・・・

そんな、「ダークスター」に対するおすすめ度は・・・

おすすめ度(5段階):★★

う、う~~~ん。
何というかこれは・・・絶対に一般受けしない映画であることだけは確かです。
しかも、これは通好みなんて軽い表現が出来るレベルではないぐらい振り切った癖を持つ作品です!
個人的には嫌いではありませんが、かと言って他の人にお勧めできるかと言われると・・・
人によっては「観るに値しない!」と評価しそうな気がしますし、案外そういう人も多そう・・・
とは言え、このシュールなストーリーには決して「★」と評価できない奥深さがあるのもまた事実。
なので、「★★」ぐらいが無難かなと・・・

ここからはネタバレを含みますので、これから観る予定がある人は「ダークスター」を見終えてからにしてくださいね!

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<以下ネタバレを含みます>

登場人物

元サーファーの現船長:ドゥーリトル
引きこもり船員:タルビー
暴力船員:ボイラー
変人船員:ピンバック
元船長:パウエル

考察・感想(ネタバレ含む)

さて、「★★」とかなり厳しい評価のこの映画ですが、実はB級ホラー映画の巨匠と名高い「ジョン・カーペンター」監督が手がけた処女作なのです。
というか、監督が学生時代に自主制作した映画をリメイクした作品だとか・・・
え!?これを学生が自分達だけで作ったの!?
その件に関して、一般人の私には正直驚きを隠せません。
と、それを前提とするならば評価もまた違ってくるのかもしれませんが、やはり現在の私がそういった前提なしで鑑賞してしまうと、結構厳しい物があります。
しかも、後にホラー映画の巨匠と呼ばれることとなる人の作品なのに爆笑SFってどういうこと・・・
そういった様々な悪条件により、やはりこのぐらいの評価となってしまいますね。

しかしながら問題はこの映画の考察に関してです。
爆笑SFと自らを称しているわけですし、SFのリアリティに対して真面目に考察するのはちょっとナンセンスです。
よって、今回はこの映画の斬新過ぎる設定の数々について紹介するという形式を取りたいと思います。

宇宙飛行士とは思えない個性的過ぎる船員達

探査船ダーク・スターには4人の船員と今は亡き(冷凍保存中)船長の計5人が乗船しています。
しかし、普通宇宙飛行士と言ったら、高い頭脳は勿論のこと人間性や精神面などありとあらゆる素養が問われるエリート職であるはずです。
何よりダーク・スターは3年(地球時間では30年)もの長い間、地球から59光年も離れた場所で、単独航行を強いられているわけです。
そんな船の船員はさぞかしのエリートなのかとおもいきや、個性的といえば聞こえは良いかもしれませんが、どっちかというと問題児揃いです。

現船長のドゥーリトルは如何にも頼り甲斐がありません。
地球への定期報告では、他の船員からいちいち耳打ちされなければ必要な内容を1人で話せない有り様。
それはまるで、どこぞの料亭の女将とその息子の記者会見を彷彿とさせます。
致命的な問題が起こった時なども、真っ先に冷凍保存中の前船長パウエルに泣きつく始末です。

タルビーはドゥーリトル以外の船員を嫌っているようで、ドームと呼ばれる観測室の様な場所に常に引きこもっています。
ダーク・スターに搭載されているメインコンピュータより先にダーク・スターの異変に気づき、1人でそれの対処に挑むというずば抜けた有能さを発揮するものの、彼のコミュニケーション能力の不足が祟り、むしろより致命的な問題を引き起こすことになってしまいます。

ピンバックにいたっては全くの別人で、本来の名前はピル・フルーグ。発射台の燃料管理技師だそうです。
ピル・フルーグ本人は700点が宇宙飛行士適正試験の合格基準であるにかかわらず、58点しか取れなかった程の人物で、錯乱状態になって自分の宇宙服を投げ捨て、危険な燃料タンクに飛び込んだピンバック本人を助けるべく、彼の宇宙服を来て助けに行こうとした所、他の人にピンバックと間違われダーク・スターに無理やり乗船させられてしまったというありえない設定です。
適正結果が58点というのは伊達ではないらしく、情緒不安定、劣等感の塊、奇怪な行動と宇宙飛行士どころか、お友達として付き合うことすらためらわれるレベルの人間性です。
全てにおいておかしな存在であるピンバックですが、何故か船内での仕事については何ら支障なくこなしています。
3年という長い船内生活に慣れた結果なのか、実は性格適正が皆無だっただけで、高い知能の持ち主だったのか・・・謎です。

ボイラーはかなり粗暴な性格で、船内で禁止されている銃器で遊びだしたりするのですが、何か上記3人の船員に比べると出番があまりに少ないせいなのか、何だか相対的にまともに見える気すらするので不思議ですね。

ちなみに、映画開始早々に死んだとされていた元船長パウエルが冷凍保存状態で生きて(?)おり、且つ、意思疎通可能な状態で映画後半に突如登場しますが、あまりにも出番が少なすぎるため個性も何も分からずじまいです。

無駄に知性を持つコンピュータ達

探査船ダーク・スターには知能を持つメインコンピュータが搭載されており、船全体のシステムを統括しています。
船員達とは音声による意思疎通が可能で、人間と同様に会話することが可能です。
ここまでであれば、普通のSFにも同じような設定がありそうですが、この作品の斬新さはこの程度では収まりません。
ダーク・スターは不安定性惑星を破壊する際に強力な爆弾を使用するのですが、その爆弾自身にも何故か個別の知性が与えられているのです。
しかも、この知性はメインコンピュータと直結しておらず、メインコンピュータ-爆弾間においても音声による意思疎通で命令を行っているのです。
何故故に爆弾に独自の知能が与えられているの・・・しかも、メインコンピュータからすら制御不能な完全独立知性です。
ただただ爆発するためだけのものに知能を与えるという常人では考えもつかないような斬新な発想に私は驚きを隠せませんでした。

しかも、わざわざ知能を持たせている割には、通信レーザーという別の経路で爆弾に指示を出すことも出来る上、命令経路の優先順位すら爆弾まかせという奇々怪々な仕様はダーク・スター設計の縦割り体制による弊害の産物なのかもしれません。
無理やりそういうことで納得しておきましょう。

無意味なシチュエーションの数々

近年の映画は、映画の中で語りたいことが多すぎるためなのか、90分という時間の中に必死に沢山のストーリーを詰め込んできます。
それはどれもこれも厳正に選別されたものであり、泣く泣くカットしたであろうシーンも沢山あるのでしょう。
よって、ほぼ無駄なシーンが登場しないものです。
が・・・この作品に限って言えばそのような常識は一切通用しません。
私の勝手な推測ですが、この映画のメインは「自我を持つ爆弾を人間が説得する」ことであると私は考えています。
しかし、それに関係するシーンは映画の5割にも満たないのです。
では、残りは・・・何と船員達の理解不能な船内生活に割り当てられてしまっているのです。
その内の殆どはピンバックの奇怪な行動です。
まるで志村けんさんのコントのような異星人との船内追いかけっこや、謎の日記紹介など本当にどうでもいいことに物凄く尺を使ってきます。
まるで映画としての最低上映時間を稼ぐために無理やり付け足したかのように・・・
しかも、正直どれもこれも爆笑には程遠く・・・せいぜい苦笑程度でしょう。
ここまで無意味なシチュエーションをふんだんに盛り込んでくる映画は観たことがありません。

でも・・・意味の無いシーンが1つもない映画というのは窮屈でもあり、先が読めてしまうので驚きも無くなってしまいます。
そういう意味で言えば、意味のシーンにも時間を割いているこの映画は非常にリアリティがあるとも言えるのかもしれません。
現実なんて殆ど取るに足らない出来事によってできていますしね。
・・・まあ、それが物語として楽しいかどうかはまた別かもしれませんが。

シュール過ぎるエンディング

哲学的な論法で爆弾20号を一時的には説得したドゥーリトルでしたが、結局はその論法が仇となり爆弾を爆発させてしまいます。
それによって、破壊されてしまったダーク・スター。
冷凍保存状態だったため、氷漬けの状態で生き残った元船長パウエル、船外に居たために爆発から免れたドゥーリトルとタルビー。
パウエルは氷漬けのまま、何処へともなく飛ばされて行き、タルビーはあこれがのフェニックス流星群に巻き込まれ、永遠に宇宙を飛び回り続けることになります。
そして元サーファーだったドゥーリトルはダーク・スターの破片に乗って、宇宙空間でサーフィンをしながら近くの惑星に落下して終わります。
・・・なんですかねこのエンディング!!!
正に奇才ジョン・カーペンター監督の感性大爆発のエンディング!
所詮は一般人の感性程度しか持ち合わせていない私はすっかり置き去りにされてしまいました。
もしかすると、Studio POPPOの奇才・蘭丸さんの方が私よりもジョン・カーペンター監督の意図を汲み取ってくれるかもしれません。
やっぱり、考察代わってもらえばよかったかな・・・

伊達が考える探査船ダーク・スターの真相

と言った感じで、一般人の概念を大きく飛び越えるこの作品なのですが、折角ですから私なりに妄想つじつま合わせを敢行してみようと思います。

  • とても宇宙飛行士適正が高いとは思えない船員達
  • 船員が死亡するレベルの緊急事態にも関わらず拒絶された地球からの支援
  • 船が老朽化で致命的なダメージを受けるほどの長期間航行
  • 音声による意思疎通が可能なメインコンピュータの搭載
  • 仕様レベルから問題だらけの爆弾制御システム

これらから、ダーク・スターというのはもともと探査船・船員ごと使い捨て前提のプロジェクトだったのではないでしょうか。
当然地球側としては使い捨てのプロジェクトに優秀な人材を割きたくない・・・そこで、メインコンピュータによる完全制御が可能なシステムを搭載した上で、複雑な操作知識が無くともコンピュータを制御することができる音声による意思疎通システムを採用したのではないでしょうか。
しかし、船ごと使い捨てる予定のため、船に対する予算は極限まで抑えたい。
そこで、綿密な全体仕様も無く、船内システムをそれぞれ別々に縦割り発注し、最も低価格で入札した企業に突貫で開発させ、後に無理やりそれらのシステムを掛けあわせたため、不合理な制御システムとなってしまったのではないでしょうか。
本物のピンバックは自分達が捨て駒として扱われることを土壇場で知り、ダーク・スターの発射前に逃亡を測ったところで、たまたまピル・フルーグと入れ替わってしまったのかもしれません。
本来であれば他人の宇宙服を着た程度で、乗船時のセキュリティが突破できるとは思えませんが、乗船する船員に対する期待の薄さなどから、大したチェックも成されなかったのかもしれませんね。
と言うかむしろ誰でも良かったのかも・・・

ここまでくると、有人探査船である必要がなさそうですが、メインコンピュータ自身は探査船の自己修復を行えないようでしたし、船のメンテナンス人員程度は必要だったのかもしれません。(現に修理技術は皆持ち合わせていたみたいですし)

こういう地球側の非人道性を想定するならば、ちょっとしたホラー感はでるかもしれませんね。
何にせよ、一般人程度の感性しか持ちあわせていない私には、ちょっと難しすぎる映画でしたね。
以上です!

おまけ:ダークスターで使用されている音楽

何とジョン・カーペンターは監督という顔だけではなく、音楽家でもあるらしいのです。
彼が作る恐怖を煽るBGMもB級ホラーの巨匠と呼ばれる1つの要因となっているようです。
今回の映画にそのような恐怖を煽るBGMはなかった様に感じますが、音楽自体はジョン・カーペンターが作っているようですよ?
ですので、そういった所にも注目してみるのも一興かもしれません。

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