タイム・チェイサーを観た感想と評価:映画考察

投稿日:

皆さんこんにちは。
タイムなんちゃらと言う名前が付いていると、何故か使命感にかられてしまう伊達あずさです。
という訳で、今回ご紹介する映画は・・・
タイム・チェイサー(I’ll Follow You Down)」です。

早速、作品情報です。

タイム・チェイサー
原題:I’ll Follow You Down
ジャンル:SFサスペンス
製作国:カナダ
公開年:2013年
監督:リッチー・メタ
概要:3日後に帰る約束で、家族を残し出張へ向かった物理学者のゲイブ。しかし、彼はそのまま謎の失踪を遂げる。数年後、父と同じ道を進み立派な科学者へと成長した息子のエロルはある日、祖父サルから父の失踪に関係する衝撃の事実を知らされることになる。エロルは失踪の原因となった父の研究を解明すべくサルと共に奔走する。

今回も原題には全然タイムが付かないパターンのタイムシリーズです。
折角ですから、過去のタイムシリーズと並べてみましょう!

タイム・リーパーズ(原題:COLLIDER)
タイム・ルーパー(原題:Time Again)
タイムシャッフル(原題:Time Lapse)
タイム・ハンターズ(原題:Fort Ross(英語名))
タイム・チェイサー(原題:I’ll Follow You Down)

こんな感じですね。

私の謎の使命感によって、観ざるをえない状態のタイムシリーズ。
そうはいっても、おすすめ度の平均は「★★」と低めなのですよね。
今回はどうかな?注目の「タイム・チェイサー」に対するおすすめ度は・・・

おすすめ度(5段階):★★★

う~ん・・・一応「★★★」としたものの、限りなく「★★」に近い感じは否めないのですよね。
いえっ決して酷い出来の作品ではないのですよ?
ヒューマンドラマとして観れば、中々味わい深い映画のような気もするのですが、サスペンス?SF?として観てしまうと、かなり退屈かも・・・
とりあえず、考察に移りましょう!

ここからはネタバレを含みますので、これから観る予定がある人は「タイム・チェイサー」を見終えてからにしてくださいね!

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<以下ネタバレを含みます>

登場人物

主人公:エロル・ホワイト
主人公の父:ガブリエル・ホワイト
主人公の母:マリカ・ホワイト
恋人:グレイス
母方の祖父:サル

考察・感想(ネタバレ含む)

映画を観ていた時には全然気づいていなかったのですが、主人公のエロル(大人)役の人ってシックスセンスで幽霊が見える少年コールを演じていた「ハーレイ・ジョエル・オスメントさん」だったんですね。
シックスセンスの時は天才子役として名を馳せてましたが、いつの間にかこんなに大人になって!!
時が流れるのは本当に早いものです・・・

さて、映画の内容に入るわけですが・・・
冒頭でも言ったように、この映画って「SFサスペンス」と考察のしがいがありそうなジャンルなのにも関わらず、サスペンスどころかSFの要素も全体的に足りていないのですよね。

この映画のSF足る要素「タイムスリップ」ですが、1時間30分近くもある全編の内、最後の20分にやっと出てくるのです。
観ているときは、もうタイムスリップなんてしないんじゃないかとハラハラしたほどです。
タイムスリップの原理等に関しても、特に細かな科学的描写はないので、ほんのおまけ程度の話なのです。
次にサスペンスの要素なのですが・・・う~ん、正直言って謎めいたハラハラ感は一切なく、不幸なホワイト家の物語が淡々と語られているだけなのですよね。
「全然タイムスリップする気配もないけど、本当に大丈夫なの!?」ってハラハラし始めたので、そういう意味のサスペンス感はありましたけど・・・
しかし、思った以上に「タイム感」がなく、非常に扱い(考察)に困る映画です。
も~最近考察し辛い映画引きすぎ!

とは言え、映画を観直してみると、気になる部分が幾つかあったので、その辺について考えてみましょう。

平行世界について

エロルの父ガブリエルは時空を行ったり来たりする「タイムスリップ」の方法を見つけたわけですが、タイムスリップ先で運悪く殺されてしまったため、過去から戻ってくることができなくなってしまいました。
そこで、エロルは父が見つけた「タイムスリップ」の方法を解明し、時を超えて父を追跡(チェイサー)することで父の死を回避し、自分の人生変えようとしたのですが、それって本当に可能なのでしょうか。
この映画の最後にエロルは自殺してしまうため、エロルが元いた時空がその後どうなったのかについて描写されること無く終わってしまっています。
しかし、もし、戻れていた場合はどうなってしまっていたのでしょうか。
エロルが元の時空に戻ると、父は存命、母も自殺すること無く存命である可能性が高くなります。
それによってエロルの人生の歩みも大きく変化することでしょう。
そんなところに別の人生を歩んだ記憶を持ったエロルが戻った場合どうなってしまうのでしょう・・・

それとも、そんな別の人生を歩んだ記憶はなくなってしまうのでしょうか?
父が失踪しなければ、エロルにはタイムスリップの研究をする動機すらありません。
それでは父を助けにタイムスリップできないので、過去を変えることができなくなってしまいます。
なんか卵が先なのか鶏が先なのかという話に陥ってしまいますね。

祖父サルがエロルに父の研究内容について最初に説明する際、「宇宙は無数にある」と説明していました。
何となくですが、今の自分は「父が失踪して、母が自殺し、恋人が流産してしまうことが決定した宇宙」に住んでいて、その宇宙そのものを変えることはできないと気づいていたのではないでしょうか。
仮に「父が失踪していない宇宙」にタイムスリップしたとしても、その宇宙をそれまで生きてきたエロルが既に存在するわけで、自分がそれに成り代わるわけには行きません。
だからこそ、自分の命を使って「父が失踪していない宇宙」を作ろうとしたのかなと・・・

ちょっといやらしい視点で考えると、タイムスリップした場合、現在にどんな影響が出るかという描写が一番厄介です。
シリアスな映画であればあるほど、適当に描写するわけには行かなくなり、非常に厄介です。
しかし、エロルが死ぬことで、元いた宇宙の描写を回避できるわけですし、ストーリー的にも上手い仕組みなのかもしれませんね。
私個人としては、タイムスリップして過去を変えても今の宇宙はそのまま影響なく進み、新たな可能性が生まれた宇宙が誕生する説の方が矛盾がなく理解できるかな~

ガブリエルはタイムスリップして何をしたかったのか

ガブリエルはタイムスリップした理由を「アインシュタインがパラメータの設定を 彼の研究を私が終わらせる安全装置を 彼が原子爆弾の開発に署名したように」というんですが、正直何を言っているのかよくわからないのです。
多分日本語字幕に問題がある気がするのですよね。

とは言え、早口でまくし立てるガブリエルの英語が私には聞き取れないため、正確な意味がわからず・・・困りました。
(格子さんから頂いた情報によってガブリエルとエロルのセリフ(英語)の全容が明らかになりました。それと共にガブリエルの目的(新案)がコメント欄にあります 2017/07/09更新)

そこで、ガブリエルがタイムスリップした年代である1946年と、原子爆弾の話から推測してみます。
ガブリエルとエロルのやりとりから察するに、ガブリエルは原子爆弾の製造を止めたかったように見えます。
1946年はアインシュタインが技術者向けに光と質量に関する式の導出法を発表した年のようです。
ガブリエルも言っているように、アインシュタインはこの時すでにルーズベルト大統領へ送られた「原子爆弾の開発を促す手紙」に署名していますので、この時の発表が原子爆弾の製造を加速させた要因だったと考えているのではないでしょうか。

もしかすると・・・アインシュタインが発表を行う前に殺すつもりだったのかもしれませんね。
「アインシュタインがパラメータの設定を(公開する前に)彼の研究を私が終わらせる(ことで、原子爆弾が開発されない様に)安全装置を(作る)」と言いたかったのかもしれません。
何となく「create safe guard」と言っているように聞こえますしね実際。

そう解釈すると、「彼が原子爆弾の開発に署名したように」というのは「彼の行動(署名)によって原子爆弾が開発されたように、私の行動によって原子爆弾を開発させないようにする」という意味合いなのかもしれませんね。
私にもう少し英語の聞き取り能力があれは実際のところがわかるんですけどね。

エロルが過去にタイムスリップした際に行ったこと

実のところ、エロルってさり気なく2回タイムスリップしてるのですよね。
1回目はガブリエルが出張にでた直後。
2回目はガブリエルのタイムスリップ先です。

父親の失踪を止めるためだけであれば、2回目のタイムスリップだけで良かったはずです。
ですが、父親の失踪を止めることで、自分とグレイスが付き合うきっかけが失われないように、2人の関係が始まるきっかけになっていたであろう、「レゴブロックで作られた車」を幼少時代の自分に届けるためにタイムスリップする必要があったのでしょうね。

こうして、主人公のエロルは文字通り、命をかけて、父親が失踪しない宇宙を創りだしたわけですが、その後、エロルが思い描いたような未来が訪れたかどうかまでは作品内では語られていません。
ですが、そういう宇宙を望んだエロル自身が居なくなってしまったわけですから、真の意味で誰も知る由がないわけです。

SFサスペンスとしてはどうかな~とは思いますが、映画自体は中々深みがあるストーリーなのではないでしょうか。
時空まで超えて父親に会いに行っているという点でも、タイムチェイサーという名前は案外悪くない邦題ですしね!

ただ、もう少し「時間旅行」の魅力を活かしたタイムシリーズが観たいな~と思う私なのでした。

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タイム・チェイサーを観た感想と評価:映画考察」への6件のフィードバック

  1. polarbear

    昨日、アマプラで観たあと、気になってこのサイトにたどり着きました。スクリプトの私なりの理解を書いてみます。
    G: I have to finish my work here.
    私はタイムマシンの研究をここで完成させなければならない。
    G: Einstein’s going to help me set up the parameters of its use.
    アインシュタインが使用するパラメータの設定に協力してくれるだろう。
    G: I’ve finished the work he started.
    私が、彼が始めた仕事を完成させるのだ。
    G: That’s why I’m here.
    そのために私はここに来たのだ。
    G: Create safeguards, okay, to prevent this kind of thing from happening.
    安全装置を造る。そうだ、こんなことが起きないようにするのだ。
    – That’s what he did with the atomic bomb.
     それは原子爆弾について彼がしたことだ。

    最後の一文がやはり、少々意味不明ですが、the work がタイムマシンを指しているのは確かだと思っています。なぜなら、Gabliel が原子爆弾の開発に関わっていたという描写は全くないし、時系列的にもありえないと思うからです。
    彼が始めた仕事というのも明確ではありませんが、劇中ででてくるワームホールの研究がアインシュタインとマイスナーの論文が元になっていることを指しているのでしょう。

    Gablielの言う安全装置も、タイムマシンの安全装置と考えた方がしっくりきます。
    しかし、原子爆弾の安全装置などというものは聞いたことがないし、アインシュタインがそれを造ったという話も知らないので、やはり最後の一文は意味がよくわかりません。

    Erol: You can’t. There are no parameters!
    そんなこと(安全装置の開発)はできない。パラメータなんてないんだ。
    Einstein spoke against the use of the bomb.
      アインシュタインは原子爆弾の使用に反対する発言をした。
    Even… even with all my genius, I couldn’t begin to imagine
    the chaos if even one more person used this.
      私の叡智をもってしても、だれかがこれを使ったら混沌が生じることなど考えもしなかったのだ。(アインシュタインの発言の引用です)
      There are no exceptions.
      例外なんてない。
      Al would tell you the same thing.
      アインシュタインも僕と同じことを言うだろう。
      You have to go back now and destroy it.
    今すぐ帰ってタイムマシンを破壊するんだ。
      There’s nothing wrong with the technology. Nothing.
    技術が悪いわけではないんだ。全く(それを使う人間が悪だということ。つまり安全装置やパラメータ設定で悪用を防ぐことはできないということ)

    返信
  2. 格子 (@Kyo_ha_Naniyomo)

     初めまして。Huluでこの映画を観た後にネットでレビューを探していたらこのページを見つけました。
     ガブリエルが1946年の世界へ行った理由について語るシーンのスクリプト(英語)をネットで見つけたので、少し長いですが引用します。登場人物の名前の記載は私が追加しました。以下かなり長いコメントになってしまいましたが、
    1. スクリプトの引用
    2. その和訳
    3. 私の解釈
    という順序で進みます。

    —————————————————————————–
    1. スクリプトの引用
    Gabriel: I have to finish my work here.
    Einstein’s going to help me set
    up the parameters of its use.
    I’ve finished the work he started.
    That’s why I’m here.
    Create safeguards, okay, to prevent
    this kind of thing from happening.
    – That’s what he did with the atomic bomb.

    Erol: You can’t.
    There are no parameters!
    Einstein spoke against
    the use of the bomb.
    Even… even with all my genius,
    I couldn’t begin to imagine
    the chaos if even one
    more person used this.
    There are no exceptions.
    Al would tell you the same thing.
    You have to go back
    now and destroy it.
    There’s nothing wrong with
    the technology. Nothing.

    (出典: http://www.springfieldspringfield.co.uk/movie_script.php?movie=ill-follow-you-down)

    —————————————————————————-
    2. その和訳
     引用した部分のスクリプトを私なりに和訳してみると次のようになります。訳の解釈について脚注が6つありますが、この記事の疑問に直接関係するのは2番目の脚注だけだと思います。他の脚注はその補足のようなものです。すでにかなり長いコメントになってしまっているので、2番目だけ読んでもらっても構いません。

    ガブリエル:私はここでの仕事を終えなければならない。アインシュタインがそれを使うためのパラメータの設定を手伝ってくれる※1。
    彼が始めた研究を私が終わらせた※2。
    私がここにいるのはそれ(=直前のセリフ内容)が理由だ。
    こういうことを起こさないために安全装置を作る。
    原爆について彼がしたことがそれだ。

    エロル:安全装置なんて作れない※3。
    パラメーターなんかない。
    アインシュタインは原爆の利用に反対してた。
    たとえ僕の全ての天才(あるいは天分?)をもってしても、僕と父さん以外の誰かがこの装置を使った場合の混乱について想像することができなかった※4。
    例外はない。
    アル(アルバート・アインシュタインの呼称と思われる)もきっと同じことを言うだろう。
    今すぐ戻ってそれ(=タイムマシン)を破壊しろと※5。
    原爆の技術は何も問題なかった※6。何も。

    —————————————————————————-
    3. 私の解釈

    ※1 「それ」はおそらく原爆を指すのでしょう

    ※2 「終わらせた」と現在完了形で語っていることから、ガブリエルはアインシュタインが生前になしえないまま終わってしまったことを自分が引き継いで終わらせたと考えているのかもしれません。おそらくそれは直前のセリフで言及されている、原爆の利用に関するパラメータの設定のことを言っているのでしょう。その設定がうまくいけば原爆が使われる事態を阻止することができるとガブリエルは考えており、その設定についてアインシュタインに教えるためにタイムスリップしたのではないかというのが私の解釈です。
     「パラメータ」というのがなんのパラメータなのかについて、「安全装置をうまく作動させるためのパラメータ」という解釈も考えましたが、それだと英語のセリフで ‘safeguards’ という表現が使われる前に ‘its’ という代名詞を使っているので「代名詞は先行詞の後」という代名詞の一般的な用法に反します。
     この部分のセリフについて、ガブリエルのセリフの中には「署名」に当たる単語や間接的にそれを指すような代名詞や言い換え表現などもないことから、日本語字幕でかなり意訳をしたことになりますが、ではどうして「彼が原子爆弾の開発に署名したように」のような、「署名」という単語を使った意訳になったのかといえば、おそらく字幕を考えた人の解釈では、この引用箇所よりも前のやりとりの中で、ガブリエル(父)がタイムスリップすることにマリカ(母)は同意したかとエロルがガブリエルに尋ねるセリフがあり、そこで “Mom didn’t signed up for this.” と言っているので、そこにかけた意訳をしたということなのではないかと考えています。4番目から6番目の脚注とも関連しますが、「やりとりの中で相手が言ったことにかぶせて答える」というよくあるレトリックをエロルはこの部分でも使ったと字幕を考えた人は考えたのかもしれません。しかし、たとえそうだとしても個人的にこの意訳はちょっと強引すぎる気はします。

    ※3 セリフでは “You can’t” の続きがありませんが、おそらくはYou can’t create safeguards.ではないかと考えました。直後にThere are no parameters.と言っていることから’You can’t set up the parameters.’である可能性もありますが、いずれにしろガブリエルがやろうとしていることは不可能だということを言いたいということは言えるだろうと思います。

    ※4 エロル自身は自分のことを天才だとは思っていないはずなのにここで ‘genius’ という言葉を使っているのは一応父からは「天才だ」と言われたので、「仮に僕が天才だとしても」というような譲歩の意味で使っているのだろうと考えました。

    ※5 「アルもきっと同じことを言うだろう」は、ガブリエルの直前のセリフにかぶせて、「ガブリエルが過去に戻ってアインシュタインに原爆を破壊するように言うのと同じように、アインシュタインもガブリエルにタイムマシンを破壊するように言うだろう」みたいな意味で言っているのかもしれません。

    ※6 問題は原爆の「技術」ではなくて、「使い方」の方だということが言いたいのだろうと思います。技術のところはスクリプトでは ‘the technology’ なので、原爆ではなくタイムマシンの技術を指しているともとれます。エロルは頭がいい設定なので、会話の流れから原爆とタイムマシンの両方を指す意味で言っているともとれます。
    —————————————————————————–

    随分長くなってしまいましたが、とりあえずここで終わりです。
    ちなみに引用したセリフの後に、二人で無事に戻ろうと考えるガブリエルの試みはどうしてうまくいかないのかについてエロルが語るセリフがあり、そこについても英語のスクリプトに即した解釈を考えたりしたのですが、記事の疑問に直接は関係しないと思い、とりあえず書かないことにしました。

    返信
  3. くらゆー

    タイムチェイサーの考察でググッたところこちらのブログに辿り着きました。
    私もタイムなんちゃらという題名の作品にはついつい手が伸びてしまいます。

    さて、プリデスティネーションという映画はご覧になられたでしょうか?
    凄く印象に残っている映画の1つです。
    こちらもタイムスリップ物なのですが是非、映画の感想また考察など記事にしていただけると幸いです。

    返信

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