メッセージを観た感想と評価:映画考察

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皆さんこんにちは。
なかなか「★★★★★」の映画が見つけられないことを気に病んでいる伊達あずさです。

そんなわけで今回紹介する映画は・・・
メッセージ(Arrival)」です。

いつもの様に作品情報から。

メッセージ
原題:Arrival
ジャンル:SFミステリー
製作国:アメリカ
公開年:2016年
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
概要:突如地球の各地に出現した12隻のばかうけ型宇宙船。お菓子な形をした宇宙船団は人類に攻撃を加えてくるわけでもなく、地球環境に影響を与えてくるわけでもなく、ただそこににひっそりと佇んでいた。何故、この宇宙人達は突然地球に姿を現したのか・・・その真意を知るべく、人類は宇宙人とのコンタクトを試み始める。主人公のルイーズ・バンクスは政府の要請により、アメリカ領土に出現した宇宙人との意思疎通を任されることになる。ルイーズは数学者イアン・ドネリーと共に、突如地球に姿を現した未知の生物とのコミュニケーションに挑むこととなるのだった。

私、この映画に登場する宇宙船がお菓子の「ばかうけ」に似ていると話題になっていたことで知ってたんですよね。
その記憶があったので、思わず借りてしまいました。(個人的にはばかうけというよりは柿の種に見えるのですが・・・)
それに、後から突然宇宙人が出てくるタイプの映画には今まで何度も酷い目に合されていますが、最初から宇宙人が出てきます!って公言しちゃってるタイプの映画にはそんなに酷い目には合わされてませんし、多分今回も大丈夫かな~と思いまして・・・

そんな、「メッセージ」に対するおすすめ度は・・・

おすすめ度(5段階):★★★

何と言いますか・・・これは難しい!(いろんな意味で)
確かにストーリーラインはそこまで難解でもないので、最後まで観れば、一応何となく分かったような気持ちになることはできるのですが、この映画が言わんとしていることを本気で読み解こうと思ったら、かなり難しい話になりそう。
そして、そこまで深く考えずに観るとするならば、結構地味なんですよね・・・話が・・・
そういった点から、この映画は好き嫌いが分かれそうだなぁ・・・ということを考慮して「★★★」とさせていただきました。

映画でそんな深く考えたくないよ!という人でも、映画の途中で眠くなってしまうほど退屈でもないので、チャレンジしてみても良いかもしれませんよ?

ここからはネタバレを含みますので、これから観る予定がある人は「メッセージ」を見終えてからにしてくださいね!

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<以下ネタバレを含みます>

登場人物

主人公:ルイーズ・バンクス
数学者:イアン・ドネリー
アメリカ軍大佐:ウェバー
人民解放軍責任者:シャン上将

考察・感想(ネタバレ含む)

今回はジャンルがSFの上、ミステリーという如何にも考察し甲斐がある作品となっているのですが・・・
いつも、映画を観終った後って、何だかんだ言いつつも、自分では分かったような気になれるものだったのですが、正直な話、この作品を観終った後、全然この作品を理解できている気になれなかったんですよね。
そこで、今回は私がもやっとしてしまった部分について考察する形にしてみたいと思います。

ヘプタ・ポッド逹の文字体系について

作中には、ヘプタ・ポッド逹の文字は「表意文字」であり、発声と言語が一致しないと言われています。
それに対し、人間の言語は話す言葉をそのまま文字にしているだけなんだそうです。
ですが、次のシーンでは突如「表語文字」と言う言葉が登場します。そして、ヘプタ・ポッドの言語は表語文字だから時制が無いのだとも・・・
え?さっき表意文字だって言ってたのに、次のシーンでは表語文字になっちゃってるよ!?どっち!?

表意文字というのはそれ自体が1つのイメージを持っている文字なのだそうです。
そして、必ずしも1つの発音と結びつく文字ではないとか・・・
例えば、温泉のマーク(♨)などがこれに相当するみたいです。この文字自体を発音することはできませんが、これを見て温泉をイメージすることができますよね?そういう文字なんだそうです。

それに対して表語文字というのは、表意文字のように1つの文字がイメージを持っているけど、ちゃんと発音とも結びつくものなのだそうです。
メッセージを観た感想と評価:映画考察_挿絵1
私達が良く使っている漢字もそれに当てはまります。例えば、山はこれ1つでやまをイメージできる上、「やま・サン」と発音することもできますもんね。
・・・とするならば、発音と文字が必ずしも一致しないと言われていたヘプタ・ポッドの文字体系って表語文字ではなく、表意文字のような気がしますね・・・誤訳?なのかな?

ちなみにアルファベットやひらがな・カタカナの様に1つ1つの文字には意味がなく、組み合わせることで初めて意味を成す文字は「表音文字」と言うのだそうです。
メッセージを観た感想と評価:映画考察_挿絵2メッセージを観た感想と評価:映画考察_挿絵3

でもって、ヘプタ・ポッドの言語には無いらしい時制ですが、これは表意・表語文字にも同じ傾向があるみたいです。
例えば、表語文字である漢字を使う中国語には時制(現在形・過去系・未来系など)が無いらしいのですよね。
確かに温泉マークにも、過去系とか未来系なんてないですもんね。

つまり、ヘプタ・ポッド逹は現在・未来・過去全て同じように認識する事が出来るため、文字に時制が無いということを表現しているみたいです。

作中で中国が比較的早い段階でヘプタ・ポッド逹の言語を理解する事が出来たのは、中国語も表意文字と同じ系統の表語文字であり、時制と言う概念が無いという類似点があったことを示唆していたのかもしれませんね。

主人公ルイーズの特殊能力の正体

主人公である言語学者のルイーズは未来に起こる出来事を知る事が出来るという能力を持っており、その能力を使って物語をハッピーエンドに導いていくのですが、どうしてこの様な能力をルイーズが要していたのか普通に観るとちょっと分かりづらいのですよね。
もしこの能力が、ルイーズが最初から持っていた独自の超能力だった場合、超能力者の密室事件ぐらいチープな映画になってしまいます。さすがにそれは無い!!

では、一体あの能力は何だったのか・・・
作中を探し回っていると、「サピア=ウォーフの仮説」なるものが登場しているのですよね。
サピア=ウォーフの仮説によると、話す言語次第では物の見方や思考の仕方まで変わってしまうらしいです。
つまり、過去、未来、現在といった時間の概念が無いヘプタ・ポッド逹の言語を学んだことで、ルイーズも彼らと同様に始まりから終わりへと流れて行く時間の概念に捕らわれない思考が可能になったということになります。

そう思って改めて見返してみると、確かに未来のヴィジョンをルイーズが見るようになったのって、ヘプタ・ポット逹の言語を学び始めてからなんですよね・・・
でもそうだとすると、映画冒頭の回顧録、紛らわし過ぎ!
観覧者に対してハンナの死が過去の出来事だと錯覚させようと敢えてミスリードを行ったのだと思いますが、それのせいで肝心の部分の理解が難しくされてるんですよね。
ルイーズの能力が、ルイーズが元々持っていた超能力だったと誤解されてしまったら、凄い駄作と思われてしまうでしょうに・・・何て危険な演出をするの!?
ともあれ、ルイーズ独自の超能力ではなく、ヘプタ・ポッドの言語から得た能力だったと理解することで、ヘプタ・ポッドがルイーズに与えた「武器」というのは「言語」の事だったと解釈する事が出来ますね。

まあ、実は最後の方でルイーズが「武器は言語よ」って直接言ってるんですけどね・・・

ヘプタ・ポッドの目的は何だったのか

作中では3000年後に自分達が人間の助けを必要とするため、今の人類を助けに来たらしいです。
でも、これに関する詳細は全然分からないのですよね。3000年後に人類の助けが必要だという点はまあそういうこともあるのかなと一先ず置いておくとして、今の人類のどの辺にヘプタ・ポッド逹の助けが必要だったのでしょうか。っていうか、そもそも、ヘプタ・ポッドって結局人類を助けてくれてましたっけ?

そこについては、明確な表現が作中にないので私の勝手な想像になってしまうのですが・・・
ひょっとするとヘプタ・ポッド逹がわざわざ12に分かれて地球の各地に出現したことと関係があるのかもしれません。
作中では、得体のしれない宇宙人に恐怖し、アメリカ軍兵士や、中国の人民解放軍などがヘプタ・ポッド逹に対して武力行使を行う(行いそうだった)描写があります。
でも、実は、これって今の世界にも同じことが言えるのかもしれません。
サピア=ウォーフの仮説が正しいとするならば、異なる言語を使っている世界中の国々では物の見方や思考のプロセスをお互い理解できないことになります。そう、地球人とヘプタ・ポッド逹の様に・・・
つまり、このまま人類が異なる言語を使い続け、理解し合うことができなければ、やがて人類は戦争を始め、滅びてしまうということをヘプタ・ポッド逹は示唆していたのかもしれません。

そこで敢えて、地球上の12ヵ所にヘプタ・ポッド逹の言語の全てを理解するために必要な情報を小分けにして送り、人類が協力してそれを1つにまとめあげ、ヘプタ・ポッドの言語という1つの言語に地球上の言語が統一された時、人類はお互いを理解し合う事が出来るという意図があったのかもしれません。

しかしあれですね・・・この映画では中国が凄く重要なポジションとして描かれていますけど、これって逆に言うならば、中国のせいで人類が1つにまとまれていないって非難しているようにも見えなくもないような・・・(まあ、作中ではロシアも中国と一緒に、真っ先に協力を拒否してましたけどね)

ちなみに、ヘプタ・ポッド逹は積極的に人類を救う必要性があったにもかかわらず、自分達から人類にコンタクトを取るでもなく、ただそこでじっと人類側からの反応を待っていたり、攻撃されそうになりつつも、地球を去らなかったのは、ヘプタ・ポッド逹にはきっと初めから結末が見えていたからなのでしょうね~

シャン上将は何故電話番号を自ら教えたのか

この映画がハッピーエンドになるためには、ルイーズがシャン上将に電話をかけ、宇宙船への攻撃を思いとどまってもらわなければなりません。
しかし、現在のルイーズはシャン上将の携帯電話の番号など知りません。そこで、未来でシャン上将と会って携帯電話の番号と、シャン上将とその奥様の思い出の言葉を教えてもらうのですが・・・ルイーズが自らシャン上将に電話の番号や思い出の言葉を訪ねたわけではなく、シャン上将の方から自分の説得に必要となる情報を積極的に提供してるんですよね。
ここだけみると、あまりにもご都合主義に見えます・・・が、ひょっとしてシャン上将もヘプタ・ポッドの言語から得られる能力に目覚めていたのでは・・・
そもそも中国語にはヘプタ・ポッドの言語同様時制の概念がありません。そして、ヘプタ・ポッドの言語をいち早く理解したのも中国だったみたいです。そんなことから、場合によってはシャン上将も、ルイーズ同様限定的ではありますが、過去・未来・現代という時の概念を超越していたのでは・・・そして、未来の自分の姿からルイーズに自分を説得するために必要な情報を提供する必要性を不完全ながら感じ取っていたとか?
っていうか、それくらいの解釈をしないと、表音文字を母国語としているはずのルイーズだけがよりヘプタ・ポッドの言語に近い表意(語)文字を扱う中国を追い抜いて理解してしまうのに納得がいかなくなってしまうんですよね。
実は他の国も限定的にヘプタ・ポッドの言語を理解できていたんですよっていう方が現実的な気がしませんか?

ルイーズは何故未来を変えようとしなかったのか

ヘプタ・ポッドの言語を完全に理解すれば未来に起こる出来事を知る事が出来ます。
ルイーズは自分がイアンと結婚するも離婚し、子供を産むも病気で死んでしまうことを知っていました。しかしそれでも、ルイーズはイアンと結婚し、子供を産む決意をします。
・・・まあ、それはいいでしょう。でも、みすみすイアンと離婚するような過ちを繰り返し、子供を死なせてしまう必要があるのでしょうか。
ルイーズはイアンが自分から離れていった原因を知りましたし、子供が何の病気で死んでしまうのかもわかっているわけです。であれば、それを回避することだってできるはずなのでは?
でも、そんなことをした場合、未来が変わってしまうのでは?未来が変わってしまったら、未来の情報で変えた過去はどうなってしまうの?
と、タイムスリップ系のお話で良く陥るジレンマに突入してしまう訳ですが・・・ひょっとするとこの作品では未来を変えることは不可能な設定なのかもしれません。

未来を知るヘプタ・ポッド逹にはそもそも時という概念が必要ないわけですから、全ての出来事を好きな順番で観測できるわけです。
とは言え、時間を飛び飛びに生きる事が出来るというだけなので、私達と同じように全ての出来事が観測した段階(体験した時点で)で確定されてしまうことには変わりないのでしょう。

対して時間と共に生きている人間は、時の流れにそって順番に観測していくことしかできません。決められた順番でしか世界を観測することができないので、現在において観測不能な未来は常に不確定です。
でももし、ヘプタ・ポッド逹の様に時に縛られず好きな順番で観測する事が出来るのであれば、未来だけが不確定な状態ではなくなるはずです。
メッセージを観た感想と評価:映画考察_挿絵4

つまり、現在、過去、未来問わず、まだ自分が観測していない場面だけが不確定なのであり、一度でも観測してしまった場面は確定済みとなるため、それが時間的に後の事であったとしても変えることはできないということになります。

これを現実世界の私達の時間感覚のまま無理やり表現するとするならば、ヘプタ・ポッドの言語を理解することで見た未来は、未来を見るという行為を含めた未来でしかなく、決して変えることはできない、と言う表現になるでしょうね。
これをルイーズに当てはめると、イアンと結婚し、娘のハンナが病死することを既に知ってしまった(観測してしまった)わけですから、その事実はどうあっても変えることはできないということになります。

ってことはあれですね。ルイーズは決してタイムリープしていたわけではなく、単に時が決めた順序に捕らわれず、好きな(?)順番で人生を体験してただけということになるのかもしれません。
体験済みの事だけがある意味で過去と呼べるものになり、過去は自分の視点で再体験することが出来ない(変えられない)のでしょう。(ただし、他人の視点では再現されているでしょうけど・・・)

ま~この理論だと、自分が見た未来を「まだその場面を見ていない+自分にその時関係していた」人に伝えることで観測済みの場面を変えてもらうことができそうに思えるかもしれませんが、自分視点で過去を再体験できない時点で変わったことを確認しようがないのですよね。
それに、既に好きな順序で観測できてしまうわけですから、そこで未来と呼べるのは未観測な場面だけです。よって、これから体験する未観測だった場面にそれらの行為の影響が出ていたとしても、それは未来を変えたとは言えませんよね。

まあなんかちょっと小難しい話になってしまいましたが、結局、体験する順序を自由に出来たところで、既に体験してしまったことは変えられないということです。

最後に

この作品を観終ったあとにまず私が思ったことは、「ひょっとすると私はSF映画ってあまり好きでないのかもしれない」ということでした。
SF作品には、ドラえもんのように別に難しい科学知識などなくても、現代科学ではとても作れそうにない凄いものが出てくるタイプの作品と、インターステラーの様にある程度の科学知識がなければ、話が理解できないタイプの作品がありますが、このメッセージという作品はどちらかというと後者のタイプなんですよね。
インターステラーの時のように、自分がほんの少しでも興味のある科学分野ならまだいいのですが、メッセージの様に自分がまったく興味のない分野の映画だと、無意識に脳が情報をシャットアウトしてしまうせいかストーリーが異常なまでに理解できなくなってしまうんですよね・・・

そう・・・「★★★」という評価を付けておいてなんですが、実はこの映画、私個人としてはあまり好みじゃないんです!!
できるだけ客観的に評価しようと思った結果なんですよね・・・「★★★」は。

好きでもないのに何で考察なんて書いた!?と、思われそうですが、この映画には「自分が理解できないものを理解しようとすることで生まれる融和の精神」についても描かれているわけですし、自分があまり好きではない(理解できない)ことを積極的に理解しようとすることで世界が平和になったりするんじゃないかと思いまして・・・
まあ、理解しようと試みたところで自分の価値観までは変わりませんでしたが、少なくても自分にとって未知の物ではなくなりましたし、未知の物に抱く恐怖心から来る攻撃性はなくなったんじゃないかな?

というわけで、この映画が好きな皆様はこの映画をあまり好きではないという私の気持ちだって(私が映画をちゃんと理解できていない可能性も含めて)、C4爆弾などで攻撃することなく理解しようとしてくれますよね?
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の”メッセージ”が届いていると信じて最後に正直な告白をしてみる私なのでした・・・

以上です。

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