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皆さんこんにちは。
自分が今、何のために戦っているのか分からなくなってきてしまった伊達あずさです。
私って今何のために戦っているのでしょうね。
民族浄化という受け入れがたい思想を持っていたバルバトス、そもそもウォルスタ人の敵だったロンウェー、推定で権力の権化・・・かもしれないブランタ、何れの指導者にもヴァレリアの支配権を渡したくないから戦っていたわけで、目指すところは民族の概念に囚われない平等で平和な世界の実現だったはずです。
しかし、バルバトスが処刑され、ロンウェーは暗殺、残るブランタの権威も失墜したとなれば、最早私に戦う理由などないのでは・・・
まして、父さんすら生きていたとなれば、父の仇を討つという名目すら失ってしまいます。
今の地位を捨て、出奔することに懸念があるとすれば、あの頭のおかしな姉さんにヴァレリアを任せるのは自殺行為なのではないかということぐらいです。まあ、それは”ぐらい”じゃないのかもですが・・・
私は姉さんに取って代わって、ヴァレリアの王になろうとか考えているのでしょうかね。
そりゃーまあ、自分で言うのもなんですが、姉さんよりはよっぽど上手く王様をやれそうな気はします。ただそれはあくまでも比較対象が最低過ぎるだけのことで、私などよりも王に適切な人なんて、それこそ星の数ほどいることでしょう。
いっそ姉さんを倒してから王政を廃止し、共和制に舵を切るという手もなくはないのですが、個人的に人民共和制の先には緩やかな衰退が約束されていると思っていますからね・・・できれば、別の上手い方法を考えたいところです。
結局、今の私を戦いへと突き動かしているのは、姉さんにヴァレリアを任せられないという思いなのでしょうか。
確かに血の繋がりが無い人はゴミ同然ぐらいに思っていそうな姉さんにはヴァレリア王なんて任せられないよね。
と、私が姉さん打倒を心に誓っていた頃、ハイム城の地下牢では・・・
暗黒騎士ランスロット「ふむ・・・生きているのが不思議なほどだな・・・下がれ!」
城外の声「また暴動が発・・・中隊は・・・通りへ急げ・・・」
暗黒騎士ランスロット「聞こえるか?ゼノビアの聖騎士よ」
ランスロット「・・・貴公らが敗れるのも時間の問題だな」
暗黒騎士ランスロット「我がローディスにとってヴァレリアの覇権など些細な問題に過ぎん。それを知らぬわけではあるまい?」
ランスロット「・・・」
城外の声「ダメだ、ロスローリ・・・援護を要請するんだ・・・我々だけでは・・・動を抑え・・・きない・・・」
聖騎士ランスロット「・・・日増しに高まる民衆の不満を抑えきれないようだな・・・?」
暗黒騎士ランスロット「所詮、バクラム人は我々と違い劣等民族だからな。彼らには少々荷が重すぎたということだ」
ランスロット「力で人を縛り付ける、そうしたローディスのやり方に問題がある・・・そうは思わないのか?」
えっ、ローディスは宗教の力で人々を縛り付けてるんじゃないの?
暗黒騎士ランスロット「縛り付けた覚えなどないな。彼らは力で支配されることを望んだのだ」
いやいや、確かに私も支配されることを望む人は存外多いと思いますけど、別に力で支配されたいとは思ってないでしょうよ。あ、でもな・・・暴力という意味ではなく、広義の意味で”力”と言っているのであれば確かにそうなのかも。
ランスロット「望んだだと?」
暗黒騎士ランスロット「そうだ・・・世の中を見渡してみろ。どれだけの人間が自分だけの判断で物事を成し遂げるというのだ?自らの手を汚し、リスクを背負い、そして自分の足だけで歩いていく・・・そんなヤツがどれだけこの世の中にいるというのだ?」
ランスロット「・・・」
暗黒騎士ランスロット「・・・貴公らの革命を思い出してみよ。貴公らが血を流し、命を賭けて守った民はどうだ?自分の身を安全な場所に置きながら勝手なことばかり言っていたのではないのか?」
ランスロット「彼らは自分の生活を維持するだけで精一杯だったのだ・・・」
暗黒騎士ランスロット「いや、違う。被害者でいる方が楽なのだ。弱者だから不平を言うのではない。不満をこぼしたいからこそ、弱者の立場に身を置くのだ。彼らは望んで『弱者』になるのだよ」
確かに不満ばかり言う人に「じゃあ一緒に改善しよう」って言うと、何だかんだとやらない理由を並べてきますよね。ある意味あれは弱者ぶっていると言えるのかもしれません。ただ、別に不満をこぼしたいからという理由で弱者になろうとしているわけではなく、何もしたくないという怠惰な自分への言い訳として弱者になろうとしているのだと思いますよ?人が支配されることを望みがちなのも、多くの人が自分のことすら自分で決めたくないと思うほどに怠惰だからです。
ランスロット「馬鹿な・・・人には自分の人生を決定する権利がある。自由があるのだ!」
その理論だと、他人に支配されたいと思うことだってその人の自由ですよね。つまり、否定になってないですよそれ!
暗黒騎士ランスロット「わからぬか!本当の自由とは誰かに与えてもらうものではない。自分で勝ち取るものだ。しかし、民は自分以外の誰かにそれを求める。自分では何もしないくせに権利だけは主張する。救世主の登場を今か、今かと待っているくせに、自分がその救世主になろうとはしない。それが民だッ!」
誰もが救世主になろうと思い始めるとそれはそれで変な事になっちゃうから、別にそこまでは望みませんけど、自分達が望んだはずの救世主に対する助力すら惜しむから質が悪いのです。民は救世主が自分達の与り知らないところで戦っている時には無責任に応援するくせに、いざ自分達も救世主に助力しなければならないような状況に追い込まれると、途端に手のひらを返して救世主を非難しはじめますからね。
結局、民の不満なんてものは如何なる状況であろうと尽きることはなく、彼らが本当に気にしているのはどこまで何もせずにいられるかどうかだけです。
ランスロット「人はそこまで怠惰な動物じゃない。ただ、我々ほど強くないだけだ」
ランスロットさんは「やらないのではない、やれないのだ」とでも言いたいのでしょうか。でも、やれないことがやらない理由にはならないと思いますけどね。だって、やれないからって何もやらないんじゃ、初見でできないことは一生できないままです。自分が生きていくための努力すら惜しむようでは、怠惰と言われても仕方がないのでは。
暗黒騎士ランスロット「・・・聖騎士よ、貴公は純粋すぎる。民に自分の夢を求めてはならない。支配者は与えるだけでよい」
ランスロット「何を与えるというのだ?」
暗黒騎士ランスロット「支配されるという特権をだッ!」
ランスロット「馬鹿なことを!」
暗黒騎士ランスロット「人は生まれながらにして深い業を背負った生き物だ。幸せという快楽のために他人を平気で犠牲にする・・・より楽な生活を望み、そのためなら人を殺すことだっていとわない。しかし、そうした者でも罪悪感を感じることはできる。彼らは思う・・・これは自分のせいじゃない。世の中のせいだ、と。ならば、我々が乱れた世を正そうではないか。秩序ある世界にしてやろう。快楽を貪ることしかできぬ愚民にはふさわしい役目を与えてやろう。すべては我々が管理するのだ!」
ランスロット「意にそぐわぬ者を虐げることが管理なのか!」
暗黒騎士ランスロット「虐げているのではない。我々は病に冒されたこの世界からその病因を取り除こうとしているにすぎん。他組織に影響を及ぼす前に悪質なガン細胞は排除されねばならんのだ!」
こんな中世然とした世界観で、ガン細胞なんてワードが飛び出すことには違和感があるな・・・この時代設定だとガンどころか細胞なんて概念すらないのでは!?・・・って思ったら、細胞の概念って1665年ぐらいから既にあったのね!ギリ中世ではないけど、ほぼ中世でした。まあ、この世界の一般人が使う比喩表現として違和感があることに変わりはないけども。
ランスロット「身体に自浄作用が備わっているように心にもそれを正そうという働きはある!」
暗黒騎士ランスロット「それを待つというのか!?フフフ・・・貴公は人という動物を信用しすぎている。民はより力のある方へ、より安全な方へ身を寄せるものだ。そのためなら愛する者を裏切ることもできる・・・カチュア!」
ランスロット「カ、カチュア・・・!何故、君がここに・・・?」
暗黒騎士ランスロット「紹介しよう、聖騎士殿。彼女こそドルガルア王の忘れ形見にしてヴァレリアの正統の後継者、ベルサリア王女だ!!」
ランスロット「!!」
暗黒騎士ランスロット「貴公の指摘した通り、バクラムはもうおしまいだ。しかし、彼女が我が手の中にある限りヴァレリアの民はローディスの下僕となろう」
ランスロット「カチュア・・・君は・・・いったい?」
カチュア「私はあずさを愛していたわ。たった一人の弟だもの、当然よね。でも、あずさは私の弟じゃなかった・・・そして、私を見捨てた・・・手に入らないのなら、いっそ・・・」
ヤンデレは嫌いじゃないけど、メンヘラは大嫌いです!
ランスロット「カチュア!!」
暗黒騎士ランスロット「私の片目を奪った男と別れるのは惜しいが、これ以上、敗北者を痛めつけるつもりはないのでね。失礼させてもらうよ」
ランスロット「ま、待てッ!!」
暗黒騎士ランスロット「さらばだ、ゼノビアの聖騎士よ」
やっと終わったよ・・・ちょっと話が長すぎます。
それにしても、創造主が言いたいと思っていることを黒い方のランスロットさんに全部言わせている感が凄いな。その証拠に、アンチテーゼとなる黒くない方のランスロットさんの反論が驚くほど貧相でしたからね。何かもう、思ってもいないことをムキになって言っているだけみたいになっちゃってました。あれはもう純粋どころか幼稚ですらありましたよ。
ランスロットさん達・・・というか、黒いランスロットさんがあまりに長々と喋るもんだから、ちっとも進んでないけど今日はここまでだよ!
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Studio POPPOのプログラム兼システム担当です。
ウォーキング・デッド大好き!ダリルかっこいいよっ!主食はキノコです。